市の名称にもあるとおり、南城市には「グスク」と呼ばれる城跡がたくさんあります。5つの国指定史跡のグスクがあり、その数は他の市町村に比べてもトップクラス! また、「樋川(ヒージャー)」や「カー」と呼ばれる湧水もたくさんあります。
そこに息づいているのは、感謝と祈りの文化。夏休みは、親子でグスクと湧水をめぐる小さな冒険へ出かけてみませんか?
グスクや湧水のスポットは、足場が不安定な場所や崖のそばにあります。 お子さまは必ず保護者と一緒に行動し、安全に気をつけてお楽しみください。
島添(しましー)大里グスク
東西200m、南北100mの大きなグスクです。大里・佐敷・玉城・知念・与那原を支配していた島添大里按司のグスクであったと言われており、佐敷按司の尚巴志によって攻略されたのちは、尚巴志の居城として琉球統一の拠点となりました。
チチンガー
島添大里グスクの城外に隣接する場所にあります。43段の石段が情緒あふれます。かつて城壁内に湧水を取り込むと水が枯れてしまい、再び城外に出したところ湧き出したことから、城内に包まれないカー=チチマランカーが名称の由来と言われています。
上の井(ウィーヌカー)
小谷区内にある3つのカーのうちのひとつ。1974年頃まで使用されていたようです。かつて、旧暦12月27日のウヮークルシー(豚の解体)で、チーイリチー(血で煮込んだ肉料理)のお供えを怠り、水が赤く染まったことから、毎年欠かさず供えているそうです。
佐敷上グスク
伝承によると、琉球を統一した尚思紹・尚巴志親子の居城と言われています。この場所から尚巴志は大きな夢を抱いたのでしょうか。現在は、子孫が「つきしろの宮」として建立した鳥居や拝殿が残っています。これまでに、中国産の磁器や武具などが出土しています。
糸数グスク
標高180m、累々と続く城壁が圧巻のグスクです。「アザナ」と呼ばれる物見台が突出し、昨年度は北のアザナに展望台が設置されました。14世紀初めに、玉城グスクの玉城按司が、西の守りとして三男を糸数グスクに派遣し、築城させたと言われています。
玉城グスク
岩をくり抜いた城門が印象的なグスク。琉球開びゃくの神・アマミキヨが築いたとされています。国王が行幸した「東御廻り(あがりうまーい)」の最終地で、国王自ら雨乞いを祈願した場所と言われています。一部城壁は沖縄戦後の建築資材として持ち去られました。
伝承によると、まだ沖縄人たちが「稲」を知らない頃、屋号「アマス」の祖先・アマミツは、琉球からの使いとして唐(中国)を訪れた時、豊かに実る稲穂を見て持ち帰ろうとしましたが果たせず、その後に使いとなった伊波按司が再び唐の皇帝に願い出ても許可がおりませんでした。
そこで、伊波按司は密かに鶴に稲穂を託して、琉球に飛ばしました。その鶴は強風にあって、百名近くの「メージ」に落下してしまいました。
メージに落ちて芽を出した稲穂は、水の豊かな受水走水の「三穂田(ミフーダ)」に移され、アマミツと、屋号「アシト」のウフメーの祖先がそれぞれに稲を育て、広がったと言われています。
※参考:「南城市史 総合版(通史)」
仲村渠樋川(なかんだかりヒージャー)
石畳が敷かれ、昔の生活がしのばれる風情のあるヒージャーです。中央の3つの樋(とい)は男性の水浴びや洗濯の場所、右側の石垣で囲まれた中は女性たちの水浴び場でした。赤瓦の建物には五右衛門風呂が設置されています。
受水・走水(ウキンジュ ハインジュ)
泉口が2つあり、西側を受水、東側を走水と呼びます。沖縄の稲作発祥の伝承地として知られています。昔、強風にあって死んでいた鶴がくわえていた稲穂を、受水走水の「三穂田(ミフーダ)」で育て、各地に稲作が広まったと言われています。
知念グスク
沖縄の中でも特に古いグスクとして知られており、400年程前に知名グスクから移り住んだ知念按司の居城と言われています。「古城(クーグスク)」と「新城(ミーグスク)」の2つの郭(くるわ)があります。知念番所や知念小学校としても利用されていました。
知念大川(ウッカー)
知念グスクから西へ下った場所にあるカー。琉球王府の歴史書「中山世鑑」では、アマミキヨが知念大川の後ろの田に稲をまいたとされています。受水・走水と並んで稲作発祥に関わる場所とされています。東御廻りの拝所のひとつとなっています。
私たちは、長い歴史の中で守り伝えられてきた大切な遺産を、正しく理解していただけるよう心がけて案内しています。
南城市のグスクや湧水を訪れたとき、そこには必ず「御嶽(うたき)」と呼ばれる祈りの場所があります。今でも地域の人々に大切にされています。単にお城や生活用水というだけでなく、そこに込められた感謝や敬意の気持ちに触れてほしいと思います。
祈るという行為そのものが、自然を大切にし、人を大切にし、地域を大切にすることに繋がります。文化財には、幸せに生きていくためのヒントがたくさん隠されているかもしれません。
グスクの石垣や湧水のせせらぎを目にするとき、少し立ち止まって「祈り」や「感謝」の心を感じてみてください。きっと、旅がもっと深いものになるはずです。