旅の楽しみといえば、やはり美味しい地元の味。 今号では、南城市の食と農業、そして観光との連携を 実現しようと奔走した異業種若手二人のチャレンジを通じて、 南城ツーリズムの広がりとその可能性を探ります。
今年の3月から4月にかけて、那覇市内のホテルで「南城市フェアビュッフェ」が開催され、南城市産の食材がふんだんに使用されました。クレソン、チーズ、モズク、セーイカが色彩豊かな美食メニューに生まれ変わる中で、特にお客様の心を掴んだのが「さやいんげん」のから揚げでした。
食材を提供した若手農家の普天間豊さんは、この企画について次のように語ります。 「例えばトマトなら品種名で売られることが多いですが、さやいんげんにもいくつか品種があり、それぞれ味わいや食感に特徴があります。しかし、消費者にはその違いがあまり知られていません。ぜひさやいんげんの魅力を知ってもらいたいと思いました」
この想いをホテルのシェフに伝えたところ、フェアで3種類のさやいんげんを食べ比べできるメニューが実現しました。から揚げで提供することでさやいんげん本来の味が際立ち、「さやいんげんってこんなに美味しいんだ!」という声が多く寄せられ、仕込みが間に合わないほどの反響がありました。
フェア開催のきっかけとなったのは、地域の食をテーマに異業種が参加した研修でした。この研修で、普天間さんと同じチームになったのが、市観光協会で南城市地域物産館の運営に携わる大城翼さんです。
チームリーダーとして、同じくチームに参加したホテルのシェフと共にフェアを企画。市内を駆け巡って食材を集めました。大城さんは当時の苦労を振り返ります。 「ホテルとしても、一つの地域をテーマにした企画は初めての試みでした。観光協会の会員企業にもご協力をいただき、那覇市内への流通をなんとか構築できました」
フェア期間中、ホテル内では南城市の物産を取り扱うマルシェも同時開催され、通常の出店よりも売上が増加するなど、フェアは大成功を収めました。
ホテルの南城市フェアビュッフェで提供された料理。さやいんげんの食べ比べは好評を博した。
普天間さんのいんげんは「おきなわ花と食のフェスティバル2024」野菜品評会で銀賞に輝いた。
農業と観光がつながるメリットについて、普天間さんはこう振り返ります。 「セリ市場以外の販路が増えることはもちろんですが、消費者に近い距離で、より新鮮な状態で作物を味わっていただけたことが嬉しいですね。消費者の反応がダイレクトに伝わってくるのも、モチベーションにつながります」
一方、大城さんは観光業界のつなぎ手として、次のような未来を描きます。 「農産物は地域の特色を引き出す要素です。オリジナリティのある観光地を作る上で重要だと思います。観光は裾野が広い産業なので、観光協会の会員や農家など、様々な業種をもっとつなげていきたいですね」
普天間さんも大城さんの言葉に深くうなずきます。 「後継者不足など農業の課題は多いですが、それは私たちが農業の現実を伝えきれていなかったせいかもしれません。観光は農業の魅力を伝える手段としても非常に有効だと思います」
普天間さんは大城さんの紹介で、一般の方々に収穫を体験してもらう農業体験事業にも挑戦します。若手二人は顔を合わせるたびに情報交換に熱が入り、南城ツーリズムの未来がさらに広がっています。
飲食
地元のカフェやレストランに新鮮な農産物を提供することで、農家は安定した販路を確保できるとともに、飲食店も新鮮で高品質な食材を利用できます。
農業体験
農作業を体験できるプログラムを実施することで、観光客は農業の現場を体験し、調理体験も加えれば新鮮な食材を使った料理を楽しむことができます。
特産品
地元の農産物を使った加工品を開発し、魅力的なパッケージで提供することで、商品の付加価値を高め、収益を増やすことができます。
イベント
地元の農産物や加工品を販売するマルシェは農家の直接販売の機会を増やせます。水産業では一般参加型のセリ「ウミンチュとれとれ朝市」が人気です。
観光と食・農がつながることには、いくつかの重要なメリットがあります。まず、経済的なメリットが挙げられます。観光客をターゲットにした地元食材の提供や農産物直販は、新たな収益源となり、農業や畜産業、漁業の収入を安定させることができます。また、観光施設や飲食店との連携により、地元の生産物の需要が増し、地元経済の活性化に貢献します。 次に、地域ブランドの強化です。観光客に地元の食材や特産品を体験してもらうことで、その地域ならではの魅力をアピールできます。これにより、地域の農産物や水産物のブランド力が高まり、国内外での認知度が向上します。
また、地域コミュニティの活性化も重要なメリットです。観光客が農業や漁業の現場を訪れ、地元の人々と触れ合うことで、地域のつながりが強化されます。地元住民にとっても、観光業を通じて自分たちの仕事や暮らしが外部から評価されることは、大きな励みとなり、地域への誇りを感じることができます。 すでに南城市内の飲食店やホテルでは、地域の生産者から食材を仕入れ、店舗の売りとする事業者が増えています。
これらのメリットを活かし、南城市では観光と食・農のさらなる連携を進め、地域全体の発展を目指しています。観光客と地元の人々が共に作り上げる「南城ツーリズム」は、これからも多くの可能性を秘めています。
市民、事業者、観光客がともに幸せになれる観光地域づくりについて考えてみませんか? 全国で活躍する著名な専門家を講師に迎え、講演会・パネルディスカッションを開催します。
日時 | 2024年10月2日(水) 13:30〜17:00 |
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会場 | 南城市文化センター シュガーホール |
参加料 | 無料(事前申込不要) |
※詳細はこちらをご覧ください。
改善前
改善後
令和6年度も沖縄振興特別推進市町村交付金を活用した「観光地美化等環境整備事業」の実施により、ギンネム等の雑木を除去し、美しい太平洋が見渡せる魅力的な観光地づくりに取り組みます。(写真:知念の国道331号沿い/令和5年度実施箇所)
令和6年度沖縄県観光功労者として、南城市観光協会の前会長である宮城源幸さんが表彰を受けました。永年にわたり同協会の役員を務めたほか、菓子職人として地域の特産を活用した土産品の開発に尽力したことが認められての表彰です。宮城さんは「観光協会設立当初から役員を務め、会長職9年の間は職員が働き続けられる環境を整えてきた。これからは相談役として、バックアップしていきたい」と受賞の喜びを語りました。