最終更新日:2026年09月04日
沖縄の旧盆「ウークイ」の翌日、南城市内各地では地域の繁栄や無縁仏の供養を祈願する伝統行事「ヌーバレー」が行われます。久手堅区では、久手堅公民館前の広場に特設ステージが組み上げられ、地域住民の手で作り上げられたアットホームで温もりあふれる宴が繰り広げられました。
「かぎやで風」で幕開け
小中学生によるエイサー
新里区長(中央左)自らも三線で出演
月明かりのもと、三線の独唱
提灯のあかりが灯る会場には、子どもからお年寄りまで多くの地域住民が集い、終始なごやかな雰囲気に包まれました。ステージでは、地元の子どもたちによる勢いのある演舞や民謡ライブ、賑やかなトークやカチャーシーが次々と披露され、集まった観客からは温かい手拍子と歓声が送られました。
地元の人々が演者であり観客でもある手作りの空間は、まさに久手堅区ならではの温かい絆を感じさせるひとときとなりました。
夫を亡くしさまよう女
割れた鏡の片方とともに、赤子を置き去りに
7年後、赤子の松寿を拾った長老たちと女が出会う
割れた鏡が合わさり、母子が涙の再会
プログラムのハイライトを飾ったのは、久手堅区だけに伝わる組踊「鏡の割(カガンヌワイ)」です。2006年に区内で半世紀ぶりに復活を遂げた本作は、夫に先立たれた女が我が子(松寿)を二つに割った鏡の片方とともに託して去り、7年後に長老や小僧らとの縁によって母子が奇跡の再会を果たすという切なくも美しい物語です。
今回の舞台では、長老役を平山元さん、女役を妻の千之さん、息子の義之助さん(小学2年生)が松寿役を演じ、平山ファミリーを中心に演じられました。また、かつて復活当時の舞台で松寿役を務めた與那嶺優輝さんが今回は小僧役として出演し、次世代へ伝統のバトンをつなぐ存在感を放ちました。
舞台上では、出演者たちの並々ならぬ情熱が光りました。松寿役を務めた7歳の義之助さんは、なんと本番前日に39度の発熱に見舞われながらも、「ヌーバレーに出る!」という強い意志をもって舞台に上がり、堂々とした演技をやり遂げました。
また、長老役の元さんは舞台後にこう振り返ります。 「今年はなんとなくゾーンに入った感覚がありました。直前まで歴代この組踊を受け継いできた人たちの話を取り合っていたからでしょうか。かつての演者たちの思いが身体に宿ったような演舞ができました」

「鏡の割」の出演者
無事に大役を果たした出演者たちですが、地域固有の伝統芸能を守り続けることへの課題も浮き彫りになっています。女役を12年連続で務めてきた千之さんは、長年舞台を支えてきたからこその葛藤と期待を口にします。
「一地域でこれほど立派な組踊を守り続けていること自体、本当にすごいことだと感じています。でも、私たちがいつまでも演じ続けていると、周りも『今年もあの人に任せられる』となってしまう。そろそろ新しい世代に引き継いでいく時期が来ていると感じています」
半世紀ぶりの復活から20年近く。久手堅の誇りである「鏡の割」を次の時代へ残していくためには、新しい受け継ぎ手の存在が欠かせません。久手堅の夜空に響いた誇り高き舞と熱い思いは、伝統芸能の未来を紡ぐ新たな担い手との出会いを静かに待っています。
