最終更新日:2021年06月25日
6月23日の「慰霊の日」を前に、玉城小学校で4年生を対象に平和学習が行われました。校長の伊良部孝先生による特別授業です。
伊良部校長は2008年から3年間、平和祈念資料館に勤めた経歴があります。昨年、同校に赴任しましたが、当時は緊急事態宣言による休校の遅れを取り戻すために、平和学習の時間が確保できなかったとのこと。「今年、平和学習をしなければさらに教師・児童の意識が薄れてしまう」という危機感から、自ら教壇に立ちました。
子どもたちには特別授業のテーマは伝えられていません。まず、2人の子ども、A君とB子さんのシルエットが黒板に張り出され、そのまわりに児童一人ひとりが「大切にしたいもの」を書き出します。家族、友達・・・。
「これらはA君がなくしたものです。A君はなぜ、大切なものをなくしたと思いますか」
児童たちはいじめ、ケンカ、病気と身近な言葉を挙げますが、伊良部校長が「戦争です」と答えを述べると、児童たちの表情が引き締まりました。
伊良部校長は数々の写真をスライドに映しながら、沖縄戦の経緯を解説します。海から押し寄せるおびただしい数の軍艦、鉄の暴風が吹き荒れる様子・・・。
「もしも沖縄戦のような戦争がもう1回起こったら、皆さんの大切なものもうばわれるかもしれません。うばわれると思うものを消してみてください」
児童たちは黒板に書いた「大切なもの」を、自ら消します。黒板にはなにも残りませんでした。
伊良部校長はさらに、児童たちに問いを投げかけます。
「B子さんが亡くなってからうばわれたものは何だと思いますか」
大切な命を失ってもなお、B子さんからうばわれたもの。あまりの難題に児童からは言葉が出てきません。
「名前です」
伊良部校長はそう言いながら、平和の礎に「〇〇〇〇の次女」と刻まれた写真を見せました。
「B子さんの名前を知っている人がみんな死んでしまったということ。名前は生きた証。それさえもうばわれたということなんです」
最後に児童たちは「戦争とは」という自分なりの考えを板書。最初から最後まで、おしゃべりもなく自分ごとのように向き合えた時間でした。伊良部校長は「今日はきっかけ。大切なのは戦争や平和についてずっと考えていくことです」と子どもたちに伝えて授業を終えました。
授業のあと、伊良部校長は「戦争体験者に語っていただく平和学習も重要だが、体験者が高齢になられていく中、体験していない世代・教師がどう伝えていくかもとても大切な課題」と、今回の授業への思いを語りました。