1. 斎場御嶽世界遺産登録20周年記念シンポジウム(2020/12/17)

斎場御嶽世界遺産登録20周年記念シンポジウム(2020/12/17)

最終更新日:2020年12月18日

『斎場御嶽世界遺産登録20周年記念シンポジウム』(主催:南城市)が、ユインチホテル南城で開かれました。
 

斎場御嶽世界遺産登録20周年記念シンポジウム(2020/12/17)

会場の様子


斎場御嶽の価値を後世に継承していくために、聖地としてのブランド化と持続可能な観光地を目指すべく開催されたシンポジウムでは、世界遺産保存・活用の最前線で活躍される有識者等を迎え、基調講演とパネルディスカッションが行われました。
 

  • 斎場御嶽世界遺産登録20周年記念シンポジウム(2020/12/17)

    瑞慶覧市長による主催者あいさつ 

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    西村教授による基調講演

主催者を代表して瑞慶覧市長は「今回のシンポジウムをきっかけに、斎場御嶽の本質的価値を再確認してほしい」とあいさつ。
 
日本イコモス国内委員会前委員長で國學院大学の西村幸夫教授による基調講演では、世界遺産の保全と活用について、実際の世界遺産の写真とともに解説。「斎場御嶽は人類の多様な祈りのかたちとして、文化の多様性称揚に貢献している」とし、自然の中に信仰がある固有な価値の重要性を語りました。
 

斎場御嶽世界遺産登録20周年記念シンポジウム(2020/12/17)

パネルディスカッションの様子


日本各地で世界遺産保全・活用に取り組んでいる有識者や研究者によるパネルディスカッションでは、オーバーツーリズムや持続可能な地域づくりについて意見が交わされました。
 
観光政策、地域政策が専門の奈良県立大学の新井直樹教授は、日本各地でみられる観光振興のためだけの利活用について「適切、的確なコントロールが必要」と警鐘を鳴らし、コロナ禍で観光客が少ないいまの時期に、「観光に消費されない持続可能な地域づくりを」と提唱しました。
 
白川郷でのライトアップのイベントで完全予約制と有償化を導入し、入場者数を制限しながら売上げ増を実現させた、合掌ホールディングス株式会社の藤田雄也さんは、観光客の安全と住民の幸福度を高めるためにも「受け入れる側がどういうお客さんに来ていただきたいかを選定するのもひとつの考え方」と話しました。
 
地域資源と健康づくりを組み合わせ、日本でのヘルスツーリズムの先駆けとなったNPO法人熊野で健康ラボの木下藤寿代表理事は、「価値を知る人に来てもらう」と、ターゲットを健康への意識が高い層に絞り、世界遺産の「紀伊山地の霊場と参詣道」を活用した『癒しと健康の交流』という観光のかたちを紹介しました。
 
琉球歴史家の嘉数仁然さんは、幼少期に家族に連れられて行ったという聖地巡礼『東御廻り(あがりうまーい)』について「当時と比べてオーバーツーリズムになっている」と拝所の観光地化を指摘。祈りの場所として何百年も持続している斎場御嶽について「観光地の前に聖域。なぜ大事なのか、そこをしっかり学ぶ必要がある」と語りました。
 
南城市役所観光商工課の主任主事で学芸員の横山幸平さんは、行政としての斎場御嶽の保護・保全の取り組みや観光利活用の構想を紹介。設立に向けて動き出している通り会については「拝みの文化が評価されての世界遺産登録。地域住民と本質的な部分を話し合いながらバックアップしていきたい」と話しました。
 
西村教授は、通り会が設立される予定のがんじゅう駅から斎場御嶽に続く道を、巡礼の一部として見立てることで「観光客も参道のように歩くようになるのでは」と、東御廻りの雰囲気の醸成を提案。「巡礼という言葉が、いまの時代に繋いでくれるキーワードになる」と語り、パネルディスカッションを締めくくりました。